目的不在の指示からは部下の知恵は出てこない

東京の桜はだいたい終わってしまいましたが、東北新幹線で北上していくと福島あたりでまた咲き始めます。青森県の満開はGWあたりでしょうか、日本ってけっこう広いですよね。 前号では「ナレッジ共有! の掛け声は、だいたい、掛け声倒れに終わる」という話をしていました。その実例として、社員数20人・創業30年のあるクライアント社長の悪い癖が、「目的を言わずに結論だけを指示する」ことだった、と書いたところでした。 引き続き文書化コンサルタントの開米さんとの会話でお送りします。 開米:それは例えば具体例ありますか? 庄司:すごくくだらない話ですけどね、たとえば朝礼で社員に「明日はTシャツを着てくるように! 以上」と指示して、それだけで終わっちゃうんですよ。 開米:え、Tシャツですか。どうしてですか? 庄司:でしょ。「どうして?」って思いますよね。でも、それを説明しないからみんな疑心暗鬼になっちゃうんですよ。「Tシャツを着てこいって、色は?半袖?長袖?トレーナーじゃだめなんだろうか・・・」みたいに。そうすると、結局みんな怒られないこと、ミスをしないことのほうに頭が行っちゃって、いちばん無難なところにいこうとするわけです。全員が白のTシャツになっちゃうみたいな。これを思考停止の状態と言ってるんです。 開米:なるほど。 庄司:Tシャツを着てこいと言った理由は、単に「近々、大事なお客さんが来るので、午前中に会社の大掃除をする」というそれだけのことだったんですけどね。 開米:えー、大掃除ですか。それじゃ、Tシャツじゃなくて、ポロシャツやトレーナーでもいいですよね。下に着るものもジーパンとかの、汚れても洗いやすいものがいいってことですね? 庄司:と、そういう知恵が出てきますよね、「目的」がわかっていれば。 開米:これが知恵? 庄司:「大掃除」という目的がわかってれば、他にもいろいろ気が回るじゃないですか。 開米:・・・ああそうか、家からぞうきん持ってきた方がいいですか、とか、洗剤買ってきましょうか、とか? 庄司:そうそう、掃除したいんなら別にTシャツといっても長袖でもいいんだな、とわかるし、汚れるだろうから白じゃない方がいいだろうな、とか考えられますよね 開米:僕は最近写真に凝ってるので、大掃除の記念写真撮りましょうって提案するかもですね。で、大掃除も社員みんなでこんなに楽しくやってます、という広報資料に使えるようにしたいから、どうせなら派手なコスプレして来てもらってもいいかも・・・・ 庄司:ということですよ。「目的」がわかれば工夫ができるんです。「目的」を伝えることによって発想が広がるんです。それをしないで社長が自分で考えた結論ばっかり指示してると、誰も考えなくなります。当然そこからは役に立つナレッジなんて・・・ 開米:出てくるわけないですね・・・ 庄司:そうなんです。 開米:で、庄司さんはそのワンマン社長に対してそう助言したわけですね「何のためにやるのか?目的を伝えることがものすごく大事なんです」と。  庄司:したんですが、これがなかなかたいへんでした。理解していただくのにものすごく時間がかかりました。 開米:えっ、でも今聞いた感じ、とても明快で納得がいく話でしたけど・・・ 庄司:いやあ、そこですよ、開米さん。創業30年、御年70歳のワンマン社長に染みついた習慣はなかなかしぶといんですよ。はじめにそのことを話した時は「なんでわしがいちいちそんなことまで説明せにゃあならんのだ!」と言ってたんですから(笑)。そしてこういう「目的をはっきりさせずに指示を出す」ケースが、中小企業のオーナー社長だけじゃなく、大企業の中間管理職でもすごく多いんです。その意味でもこの話は参考になると思います。 開米:そうですね、実際のところその社長さんはどうなったんですか? 庄司:実はですね・・・ 続きは次号にて、「権力関係の中での人への接し方はなかなか変わらない」編です。


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こんにちは。 今回ご紹介する相談の内容は、 ************************** 「少し前に予算をかけて営業支援システムを導入したが、 いつの間にか営業マンがウソの報告をしてくるように なってしまった」 ************************** というものです。 訪問数を実際より多めに申告していることが最近になって わかったそうです。 この問題は、前回の「営業マンが日報